便利になった

本の値段と言えば、私が中学生のころ、筒井康隆の「七瀬ふたたび」をハードカバーで買って、確か780円くらいだっと記憶する。「家族八景」が文庫化されたばかりのころで、こちらは180円ではなかったかな。

物価そのものが安かったのだから当然だけど、本は安かった。400円超える文庫はそうとう厚かった記憶がある。

そんな中で、私はハインラインの「愛に時間を」を本屋で注文して購入した。どうしても読みたかったけれど店頭になかったからだ。(えーと、確か「月は無慈悲な夜の女王」とか「宇宙の戦士」が文庫で出て、ハインラインの大ファンになったはず。「宇宙の戦士」の加藤直之のカバーと本文イラストにはしびれたな。あれの影響でガンダムできたのじゃなかったっけ?)

で、ハヤカワSFシリーズの「愛に時間を」は2,500円だったと思う。目玉が飛び出るほど高い、と思ったものだ。

それ以上に強烈に憶えているのは、書店に注文してから実際に手にするまで、2週間かかったということだ。

本の面白さを知ったばかりのころで、おもしろい作品を書く作家に巡りあうと、その作家の作品を全て読まなければ気が済まなかった。筒井然り、小松左京然り、平井和正然り、田中光二然り、山田正紀然り。

当時の私は知恵が足りなかったので、図書館を使うということを知らなかった。だから店頭においてない本はいちいち注文して手に入れていた。山田正紀の

 

火神(アグニ)を盗め (ハルキ文庫)

火神(アグニ)を盗め (ハルキ文庫)

 

 初版はノン・ノベルから出ていた新書で、これも注文して手に入れた。新書さえも。2週間かけて。

今ではamazonで注文すれば2日後に(田舎住まいなもんで)手に入る。いい時代だ。その分、店頭に並ぶ本は昔よりずっと少なくなったと思われる。だってフランク・ハーバードの

 

デューン砂の惑星 (1) (ハヤカワ文庫 SF (76))

デューン砂の惑星 (1) (ハヤカワ文庫 SF (76))

 

 が小さな書店で簡単に手に入ったもの。当時は「石森章太郎」(石ノ森ではなく石森)先生のイラストだったなー。今では小さな書店そのものがなくなってしまった。

私が住んでいるアパートのそばに昔ながらの小さな書店があって、よくぞ生き延びているなあと感心して店内を覗いてみたことがある。・・・書籍はほとんどなかった。エロ雑誌の山、山、山、であった。なるほど。どうやら、エロと「雑誌の配達」で生き残っているらしい。

20世紀は遠い。